研究概要 |
実験に先立ち、咬合力が発揮されたときの下顎骨のひずみを、定量的に測定する装置を、インプラント患者の下顎模型上で作製した。まず、左右側の最後方位のフィクスチャーに上部構造体を作製した。それぞれの上部構造体には、間に変位センサを設置できるような形態を付与した。変位センサはの相対的な垂直的位置変化を検出する方向に設置した。装置の精度は2,5μmの精度を有し、口腔内の環境においても精度に大きな変化はないことを確認した。 装置を口腔内に装着し、レジン製のブロックを介在させて咬合力を発揮させた時の、下顎左右側の最後方位フィクスチャー部での下顎骨の垂直的位置変化を測定した。また、咬合力発揮の指標として、左右側の咬筋筋電図を同時記録した。 実験の結果、左右側のいずれでレジンブロックを咬ませた場合も、ブロックを咬ませた側が、対側より100〜130μm上方に変位した。また、咬筋の筋活動はブロックを咬ませた側の方が大きかった。 今回行った実験と同様の計測を、有歯顎者において行った結果においても、ほぼ同様の結果が得られている。下顎骨のひずみ量に影響を及ぼす因子としては、下顎骨の質、形態および下顎骨に加わる応力等が考えられるが、今回の実験の対象である無歯顎インプラント患者は、有歯顎者と比較して下顎骨の質、形態が大きく異なっていると言える。にもかかわらず、ひずみ量に大きな差異が認められなかったのは、無歯顎者では有歯顎者と比較して咬合力を発揮する筋力が小さかったためと考えられる。
|