卵巣摘出によるエストラジオールの減少と、臼歯削合による咬合の変化により惹起された顎関節の変化が、卵巣摘出後にエストラジオールを投与することにより、回復しうるかどうかを検討した。予備実験により決定された投与量のエストラジオールを一日一回、大腿部筋肉内に注射投与(間欠的投与)することにより、組織学的にみられた関節頭の変性、退行性変化が軽減されていた。また、関節頭表面の軟骨層の厚径においてもエストラジオール投与による回復傾向がみられ、2週目にはコントロール群と有意差がみられなくなっていた。骨形態計測においても、卵巣摘出群における骨量の減少はエストラジオール投与により抑制され、卵巣摘出+咬合変化群においては、逆に2週目には骨量の増加傾向も認められた。骨量の増加傾向がみられた理由としては、エストラジオールの投与量が生理的範囲を越えていたか、あるいは咬合の変化による影響と考えられた。以上の結果より、卵巣摘出により惹起された顎関節の変化が、卵巣摘出後にエストラジオールを投与することにより回復しうることが確認され、女性ホルモンが顎関節のリモデリングに関与していることが推察された。今後、持続的に投与した場合、間欠的投与との間に差が見られるかどうか、また、投与量を増やし、過剰投与の場合にはどうかなどを検討して行く予定である。
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