以前に我々が行なった実験結果より、塩酸バンコマイシンは肥満細胞膜表面の受容体には作用せず、G蛋白質を直接に刺激して活性化しヒスタミンを遊離しているものと考え、このメカニズムを明らかにするために、まずGi蛋白質の抑制物質である百日咳毒素で肥満細胞を前処理して塩酸バンコマイシンに対する反応を調べた。その結果、百日咳毒素濃度100ng/mlから1μg/mlの濃度で添加して2時間処理しておくと前処理した細胞のヒスタミン遊離率は百日咳毒素により濃度依存性に抑制され0.1μg/mlの濃度でほぼ100%抑制された。このことより、酸素バンコマイシンによるヒスタミン遊離には百日咳毒素感受性G蛋白質(Gi)が関与していることが明らかになった。ポリペプチドのヒスタミン遊離においては、肥満細胞膜表面の負の電荷が影響することが知られているので、今後は肥満細胞表面をニューラミダーゼで処理してある酸残基を加水分解して負電荷を減少させた状態で塩酸バンコマイシンで刺激してその反応を調べる予定である。
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