PCBをはじめとする有機塩素化合物は、環境汚染物質で、特にPCBはカネミ油症の主たる原因物質として知られている。そしてこれらの化合物は、口腔粘膜に影響を与えることが、疫学調査よりわかっている。一方、臨床で出会う難治性口腔粘膜疾患には原因不明なものが多く、この原因に有機塩素化合物が関与しているのではないかと考え、以前の実験により変化のおこることの分かっている唾液腺とともに実験を行った。まずビタミンAについてであるが、口腔粘膜に関しては、上皮組織を正常に保つ働きを持っている。PCB等の投与にて、HPLCにより、唾液腺でビタミンAが減少することを確認したが、口腔粘膜においてもベータ-カロチンが減少することを確認した。又、唾液腺においては薬物代謝酵素の誘導により、ビタミンAが減少することを確認したが、口腔粘膜に関しては、組織量が少なかったためか、薬物代謝酵素に関する明確なデータを出すことができなかった。 カテプシン類の酵素については、唾液腺では、有意な上昇がみられたが、口腔粘膜組織では、やや高い値ではあるものの、有意な差は今回の実験ではみられなかった。 形態学的には、唾液腺では、空胞素性、糖タンパク合成子の変化がみられたが、口腔粘膜に関しては角化異常が、しばしばみられた。 これらのことより、さらに、他の動物での実験等を行わなければ明確に言及できないが、口腔粘膜疾患と有機塩素化合物に何らかの関係があることを示唆する結果と思われた。さらに検討を行う予定である。
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