本研究では、ウレタン・クロラローズで麻酔したSD系ラットを用いて、三叉神経系を含んだ感覚入力の伝達経路である視床髄板内核群の侵害受容ニューロンのスパイク発射活動を観察した。電極には、微小電極抵抗計(今回購入)で測定した抵抗値が5〜10MΩガラス毛細血管微小電極を使用した。今回は、視床髄板内核の外側中心核と束傍核から単一ニューロンのスパイク発射活動を細胞外電位として導出した。規格化した自然刺激(動脈クレンメによるピンチ、筆によるブラッシング等)を用いて、単一ニユーロンの受容野を決定し、その機能的同定を行った。空気吸入時の一定の電気刺激に対する単一ニューロンのスパイク発射動を記録し、これをコントロールとした。その後、笑気吸入を開始しコントロールと同一の記録を繰り返し経過を観察した。発射活動は、すべてデーターレコーダーに記録した。また、中脳中心灰白質の電気刺激を行って、笑気吸入の場合と同様に一連の記録を繰り返し経過を観察した。実験終了後、イオン注入による電極のマ-キングを行い、固定・保存した。後日、スパイキ発射数のヒストグラムを作成し、スパイクカウンター(今回購入)を用いて最高発射数による比較検討を行った。また、連続凍結切片を作製し記録部位を組織学的に確認した。 数個の単一ニューロンからスパイク発射活動の記録が得られた。受容野は広く、両側の耳介、鼻背口腔、上下肢先端部および体幹部の一部に及ぶものであった。本研究では、笑気吸入により発射活動の抑制・無変化・亢進のそれぞれが認められ、記録中の変化も一様でなく、複雑な様相を呈した。また、中脳中心灰白質を電気刺激した場合も笑気吸入の場合と同様の傾向を示した。結果の一部は、第22回日本歯科麻酔学会総会(平成6年10月)において発表した。本研究は、笑気の鎮痛・鎮静作用の解明に貢献できるものと思われる。
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