多形性腺腫は、口腔ないにおいてもっとも多く見られる唾液腺の腫瘍であるが、その組織像は極めて多彩であり、特徴として間質は線維性、粘液腫性、軟骨組織などが見られ、ごくまれに骨組織の形成が見られる。われわれは、病理組織学的に多形性腺腫と診断され軟骨の認められた標本を用いて、コラーゲンタイプI、II、Xの局在を調べ、それらコラーゲンが多形性腺腫の組織内に存在するかを調べてきた。これらは、コラーゲンが軟骨細胞様細胞の分化とともに発現が変化し、軟骨の石灰化、あるいは骨化に深く関与していると推測された。そこでさらにコラーゲンの局在部位の細胞がそれらコラーゲンを産生しているかを調べるために、コラーゲンタイプI、II、およびXのm RNAの発現について比較検討した。その結果、コラーゲンタイプI m RNAの局在では軟骨細胞は、ほとんど染色されなっかった。コラーゲンタイプII m RNAの局在では軟骨細胞に染色性が強く発現が認められた。コラーゲンタイプX m RNAの局在では軟骨細胞に染色性を示し発現が認められた。以上の結果から、多形性腺腫に見られる軟骨細胞が遺伝子(m RNA)を発現することが確認できた。これらは、軟骨細胞の石灰化および骨化に関与していると思われ、それらの重要な因子であることが示唆された。また軟骨組織の形成には、コラーゲン以外にも多くの基質蛋白あるいは分化、増殖因子が存在する。その中でもフィブロネクチンは、コラーゲンと細胞との接着に関与しているといわれている。今後さらにフィブロネクチンとコラーゲンの関与について検討し、多形性腺腫における軟骨形成機序を明らかにしたいと考える。
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