顎骨骨髄炎と診断され、外科的療法が必要である2症例(症例AとB)から試料を採取した。すなわち、腐骨除去術施行時に腐骨を採取し、滅菌した乳鉢と乳棒で磨砕後嫌気ボックス内にて輸送用液体培地(RTF)を加えよく撹拌した(原液)。この原液をRTFで希釈しCDC処方嫌気性菌用血液寒天培地(血液寒天培地)に塗抹後嫌気培養した結果、黒色色素を産生するコロニーが多数発育した。ついで、発育したコロニーのグラム染色性と酸素要求性を調べると両症例ともすべて嫌気性グラム陰性桿菌であった。生化学的性状試験とガスクロマトグラフィーの結果から属を同定すると黒色色素産生菌はすべてPrevotella intermedia(P.intermedia)であった。 最小発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)を、微量液体希釈法を用いて調べた結果、P.intermediaに対するβ-lactam剤のMIC_<90>はペニシリンG、アンピシリン、ピペラシリン、セファクロル、セファロチン、セフメタゾール、ラタモキセフはいずれも100μg/ml以上で、これら薬剤の抗菌性は低かった。しかし、イミペネムのMIC_<90>は12.5μg/mlであり抗菌性は高かった。 ニトロセフィン法とβ-チェック法でβ-lactamase産生性を調べたところ、約30%の菌株から活性が検出された。ミクロヨード法でアンピシリンとセファゾリンを基質としてβ-lactamase活性を調べたところ高度産生株のβ-lactamase活性は50〜250mU/mgであった。 EDTA-2Naを用いて外膜透過性障害を測定するとMICが1/4以下になる菌株が数株認められた。 以上の事実は、顎骨骨髄炎の発症と進展に薬剤耐性P.intermediaが関与し、その耐性機構には少なくともβ-lactamaseと外膜透過性障害が関係していることを示唆している。
|