歯列矯正治療の初期に用いる弾性率が低く、有効たわみ距離の大きな線材料の開発を目的として研究を行った。今回は、従来より行ってきた重合法の他に、ポリメタクリル酸メチルを加温し、引抜成形する手法を用いた線材料を試作し実験検討を加えた。 この結果から、物性特性が最も良好であったPMMAをマトリックス材に選択し、ポリマー系線維、アルミナ線維Si02系ガラス繊維、CPSA系ガラス繊維との複合化を試みた。これらの力学特性を調べるために3点曲げ試験を行ったところ、CPSA系ガラス繊維を強化繊維として用いた複合材では、ガラス繊維体積分率を調整することで、様々な強度特性を発揮させられることがわかった。そこでガラス繊維体積分率を小さくし、弾性率を下げたところ現在治療の初期に用いられている金属線材料と同じ様な特性が得られた。これらの線材料は、透明であり、金属線材料と比較して審美的に優れている。 現在の問題点として、たわみ量が大きくなるとガラス繊維が破断し、特性が大きく変化することがある。この点に関しては、分子量の異なるPMMAを用い、ガラス繊維の強度への依存を軽減させることで対応できるものと考えている。 一方、CPSA系ガラス繊維をリン酸塩溶液で処理することによりリン酸カルシウム質化合物で被膜された生体材料用ガラス繊維となることが分かっている。今後は、この処理を行なうことにより、生体親和性の高い材料を開発する予定である。また、臨床応用のため耐久性、吸水性、耐熱性、生体毒性などについても検討を加える予鈴である。
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