歯根膜線維における機械的受容器の特殊神経終末であるRuffini様神経について、神経細胞の比較的太い神経線維、さらに特殊神経終末をも染色するProtein Gene Product9.5(PGP9.5)を用いた組織化学的研究によりその神経分布が明らかになりつつある。本研究ではラット上顎切歯に矯正力を加え、切歯歯根膜内に分布する機械的受容器がどのような動態変化を示すかを検索した。 実験材料として40〜50日齢の雄性ウイスター系ラットを用いた。実験群においては上記ラットの上顎切歯に幅5ミリのバンドを作成し0.014インチのステンレススチールワイヤーでスプリングを作成後、バンドにろう着。ラットを泡水クロラールにて腹腔内麻酔後約30グラム重の切歯離開力が作用するようスプリングを調整し矯正用スーパーボンドにて歯頚部より5ミリの部位にバンドを合着した。またSham群においてはスプリングをアクチベートせず、矯正力が加わらないようにした状態でバンドを切歯に装着した。両群とも装置装着後12時間、1日、2日目に泡水クロラールにて腹腔内麻酔後、左心室より0.1Mのリン酸で緩衝した4%パラホルムアルデヒド固定液にて灌流固定後、同液にて24時間浸漬固定した。その後、上顎骨を取り出し、10%EDTAにて3〜4週約4℃で脱灰を行った。脱灰後、30%シュークロース含リン酸塩溶液に24時間浸漬し凍結ミクロトームにて厚さ50ミクロンの連続切片を作成した。その後、PGP9.5に対するポリクロナール抗体を利用してアビチン-ビオチン コンプレックス法により、免疫染色を施し検鏡した。 その結果、本方法はWaldo法にくらべ力の作用が弱く、より臨床的な矯正力に近いモデルであることが判明した。また、12時間後においてはRuffini様神経に変化がみられなかったものの1日および2日目において神経終末に変化が認められた。
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