研究概要 |
本研究では,すでにヒト歯肉繊維芽細胞(HGF)に対する細胞凝集作用を確認している381株の他に,ATCC33277,W50,W83,haral,JH4の5株についても同じ様に細胞凝集実験を行った。加えた細胞数に対する凝集塊数の割合(%Nv)を算出し,これを細胞凝集活性の指標とした。(この値が小さいほど凝集活性は高いことになる) その結果,調べた6株の中でharalとJH4は特に強い活性(%Nv=19.4,24.3)を示し,W50,381,ATCC33277がこれに続いた(%Nv=39.4,41.5,79.0)。これに対してW83では非常に弱い活性しか示さなかった。同じロットの各外膜小胞標品を用いて緬羊赤血球に対する凝集実験を行ったところ,6株すべての外膜小胞が凝集能を示したが,特にharal,381,JH4,W50の4株は,%Nvが各々15.3,15.7,22.6,29.7%と非常に強い凝集活性を示した。ATCC33277,W83も%Nvが52.9,86.5%と明らかな凝集能を示した。HGF及び緬羊赤血球に対する凝集活性を比較してみると,ほとんどの菌株ではパラレルであったが,381株ではHGFより赤血球に対する凝集活性が相対的に強かった。また,haral,JH4はいずれの細胞に対してもきわめて強い凝集活性を示した。 以前の研究において,381のHGFに対する凝集作用がプロテアーゼの作用によるのではないかと考えられていたが,これが他の菌株にもあてはまるかどうかを確かめるために,細胞凝集実験に用いたロットについてカゼイン分解活性,BApNA分解活性,BLpNA分解活性を測定した。その結果,カゼイン分解活性は,細胞凝集活性の弱いW83株でも33277株の1.5倍以上の値を示し,BLpNA分解活性は381,W83以外の菌株では活性が検出されなかった。一方,BApNA分解活性は,多少のくい違いはあるものの,細胞凝集活性の強い4株が高い活性を示し,ATCC33277,W83株の活性は弱かった。以上の結果より,調べた基質の中ではBApNAを特異的に分解する酵素の関与が最も強いように思われた。但し,酵素活性の測定にはチオールが存在していること,各菌株の酵素活性のチオール依存性にも差があることから,単純な比較は無理である。 今後,菌株あるいはロット数を増やすと同時に,現在明らかにされつつある他の生物活性についても検討することによって,本菌の細胞凝集機構をさらに解明していく予定である。
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