本教室ではFコート材の基礎的研究ならびに臨床的研究を行い、さらに2年間の臨床成績を調べた。2年間にわたる臨床的研究からFコート材の理工学的性状に幾つかの問題点が指摘された。本研究はFコート材の理工学的性状を改善することを目的に、Fコート材のフッ素ポリマーと分散させたNaF量を変化させた新たな材料を作成し、それらがFコート材塗布周囲の酸処理エナメル質のフッ素取り込み量にどのような影響を及ぼすかを分析化学的に検討した。 組成を変化させたFコート材(1.Fポリマー100%、NaF100%(従来品)、2.Fポリマー100%、NaF0%、3.Fポリマー50%、NaF50%、4.Fポリマー0%、NaF0%、5.Fポリマー0%、NaF100%)をウシエナメル質に塗布し、石灰化液に30分間浸漬させた試料についてFコート材塗布周囲のエナメル質のフッ素取り込み量を調べた。フッ素取り込み量の定量にはエナメル質生検法を用い、1N過塩素酸10μl中に溶出したカルシウム量、フッ素量を測定した。カルシウム量の測定は原子吸光法、フッ素量はフッ素イオン電極を用いて測定し、フッ素濃度を算出した。 結果を表に示す。酸処理エナメル質に取り込まれたフッ素濃度はFコート材の中のFポリマーの含有量よりもFコート材中に分散させたNaF量の影響をうけているものと考えられるが、さらに耐酸性試験などを行い検討していく。
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