本年度はまずラットの歯を含んだ顎骨の凍結未固定非脱灰切片の作製法を確立することから着手した。未固定ラットを麻酔下で断頭屠殺後、ただちに下顎骨を摘出し、液体窒素にて凍結し、さらに時々冷やしながら、注意深く臼歯歯冠エナメル質をエンジンバーで削り取った。CMC(5% sodium carboxymcthyl cellulose solution)に包埋し、cryostatで切片化した。同時に今まで行ってきた実験との対比を考え、マウスの凍結切片の作製も行った。この場合エナメル質のトリミングは行う必要はなかった。次に抗ヒトKi-67モノクローナル抗体による免疫組織化学染色を試みたが、結局、今までに文献上発表されていた抗ヒトKi-67モノクローナル抗体とラットとの交差反応は、ない ことが判明し、これ以後、凍結切片→免疫組織化学的手法という道筋を断念し、グルタールアルデハイド固定→テクノビット包埋→切片化という手法と、3H-Thymidine投与→オートラジオグラフィーによる細胞増殖の判定を行う事とした。マウス下顎第一臼歯をワイヤースプリング法で頬側に移動し、18時間という比較的短期間の移動期間中の増殖細胞の出現様相について、詳細な検討を加えた。3H-Thymidineは歯の移動開始後、8、16、24、32、40、48時間後に投与し、その1時間後にグルタールアルデハイド固定を行った。この実験の結果については73rd IADR(Singapore)にて発表を予定している。さらに、本実験を発展させ、cell migrationについて検討をするため、長時間(2週間)に実験についても、既に着手している。
|