抗発癌プロモーターのスクリーニング試験のうち、protein kinase C(PKC)の活性阻害試験において、緑茶の主ポリフェノール成分の(-)-epigallocatechin gallate(EGCG)が、顕著な阻害作用を示すことを当研究室と国立がんセンターとの共同研究により明らかにしている。一方、五倍子の主成分であるpentagalloylglucoseにもEGCGと同様に抗発癌プロモーター作用が認められており、その作用はPKC阻害作用によるものであることが予想されることから、PKC阻害活性を指標としてより有効な抗発癌プロモーター活性物質の探索を行った。 まず、タンニンや関連ポリフェノールを含有する植物の多いトウダイグサ科、バラ科、ツバキ科の他、キク科、アヤメ科の諸植物のエキスについて、PKC阻害活性のスクリーニングを行った。その結果、アヤメ科植物のジャーマンアイリス(Iris germanica)の根のエキスに比較的強い阻害活性を認めたので、PKC阻害活性を指標としてその活性成分の単離、構造解明を行った。 本植物の乾燥根をメタノールで冷浸した後、n-ヘキサン、酢酸エチル、n-ブタノールで順次抽出して、分画を行った。各エキスのPKC活性試験の結果、強い活性を認めた酢酸エチルエキスからphenol類、isoflavonoidおよびiridal型triterpenoidを単離した。単離した各化合物についてPKC活性試験を行った結果、isoflavonoidに阻害活性を認めるものがあり、逆にiridal型triterpenoidのなかには活性促進作用を認めるものもあった。このように同植物から、相反する作用を示す化合物を単離したことから、それら化合物の共存関係を調査するとともにさらに活性成分の単離、構造解明を進めている。
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