胆汁酸は主に腸肝循環を行なっており、その代謝もこれを中心として営まれるとされていた。申請者らは、赤血球の細胞質画分に3-オキソ胆汁酸を3α-並びに3β-ヒドロキシ体へと還元する酵素を見いだし、通常血中には見られない3-オキソ胆汁酸を有する先天性胆道閉塞症、原発性胆汁性肝硬変症患者との関連に着目した。そこで、本酵素の特性、肝胆道疾患との関連、更に肝3-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼとの相同性を明らかにし、これら疾患の病態解明に寄与することを目的として以下の実験を行った。 1.7及び12位にカルボニル基、水酸基を持つ5α-並びに5β-3-オキソ胆汁酸を合成した。 2.カルボニル酸素の交換反応及びその還元反応を利用し、ステロイド核上水酸基に重酸素及び重水素を導入した安定同位元素標識胆汁酸を調製した。 3.1.で合成した各種3-オキソ体及びその還元成績体である3α-、3β-ヒドロキシ体のカルボキシル基及び水酸基の誘導体化法を吟味し、負イオン検出ガスクロマトグラフィー(GC)/マススペクトロメトリー(MS)における分離系及び超高感度測定法を確立した。 4.液・液抽出法、固相抽出法を組み合わせた生体試料中胆汁酸の効果的なクリーン・アップ法を確立した。 5.種々3-オキソ胆汁酸を基質として用い、本酵素の基質特異性を精査した。 6.α-、3β-ヒドロキシ体への還元酵素活性の至適pH、Km値はそれぞれ異なっており両異性体への変換には異なる酵素の関与が示唆された。 7.3α-及び3β-ヒドロキシ体いずれからも3-オキソ体が生成することから本酵素がオキシドレダクターゼであることが示唆された。
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