本研究においては、抗原特異的B細胞TP67.21および好塩基球RBL-2H3を用い、レセプター会合と、細胞内カルシウムシグナルとの関係を定量的に追究した。さらに、レセプター会合と抗体産生および脱顆粒反応との関係についても検討した。その結果、以下のことが明らかになった。 1.ハプテンを結合させた蛋白質を抗原として用いた場合、両細胞ともに、最大のカルシウムシグナルを誘導するために、最適な抗原のハプテン密度が存在した。 2.TP67.21細胞は抗原分子が大きいほど細胞内カルシウムイオン濃度上昇が大きかったのに対し、RBL-2H3細胞は、比較的小さい抗原に大きい応答を示した。 3.細胞内カルシウムシグナルの上昇量と、抗体産生量および脱顆粒量との間にはよい相関が見られた。 4.ハプテン化蛋白質により誘導された細胞内カルシウムシグナルは、1価のハプテンにより急速に消失した。このことは、カルシウムイオンの、細胞外からの流入および細胞内貯蔵部位からの放出のいずれについても確認された。このとき、同時にレセプターの動態を観察したところ、カルシウムシグナルの持続とともに形成されるパッチ状のレセプター会合体は、過剰のハプテンにより消失しなかった。このことから、パッチ状のレセプター会合体はカルシウムシグナルを誘導することはできず、カルシウムシグナルはより小さい会合体により誘導されると推察された。
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