本研究では胎児-新生児期の胆汁酸代謝に重要な役割を果している1β-水酸化反応について、カニクイザルをヒトのモデル動物として用いて基礎的検討を行い、下記の結果を得た。 1.カニクイザル肝ミクロソームにおける1β-水酸化酵素の特異性 (1)胆汁酸常成分ではデオキシコール酸(DCA)の1β-水酸化が最も良く進行した。また、各種胆汁酸アナログ20種を用いて基質特異性を調べたところ、1β-水酸化反応は3位及び12α位に遊離の水酸基を有するジヒドロキシ胆汁酸及びウルソデオキシコール酸(UDCA)で最も良く進行することが明らかとなった。UDCAは臨床医療の場で広く利用されている薬剤であり、本知見はUDCAの体内動態を解析する上でも有用な情報と考えられる。 (2)1β-水酸化酵素と他の胎児性胆汁酸生合成酵素(6α-水酸化酵素)との異同を各酵素反応に及ぼす添加剤の影響及び各種胆汁酸による阻害実験等により解析した結果、それぞれ異なる分子種であることが推察された。 2.胆汁酸1β-水酸化酵素の精製 (2)カニクイザル肝ミクロソームより、各種クロマトグラフィーを組み合わせて精製を行った。現在、部分精製の段階であり、今後、さらに均一化するとともに、本酵素の抗体を調製し、免疫定量法を開発する予定である。 ラット肝ミクロソームによる胆汁酸の水酸化反応 (1)ラットにおける水酸化反応を再検討したところ、新たにDCAの1β-水酸化が進行することを見出した。また、炭素数27の高級胆汁酸においても1β-水酸化が進行し、胎児性胆汁酸の新規生成経路の存在が示唆された。 カニクイザル及びラットにおける1β-水酸化酵素の基質特異性は非常に類似していることが明らかとなった。
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