[概要]微生物がその増殖課程で産生する代謝生成物(カテコール、L-チロシン、乳酸)を等研究室で考案した酵素/化学増幅型バイオセンサで高感度に測定することにより、10^5個ml^<-1>以下の超微量菌数を比較的短時間でモニターできる高感度菌数計測システムを確立することを目的として、以下の実験を行った。 1)大腸菌計測システム 大腸菌をサリチル酸を含む液体培地で培養し、代謝生成するカテコールをチロシナーゼとL-アスコルビン酸を組み合せた化学増幅型バイオセンサで測定した。培養液グルコース濃度10mM、pH6.5、L-アスコルビン酸濃度5mMにおいて、大腸菌数(10^4個〜10^6個ml^<-1>)とセンサの電流値との間に有意な相関関係が認められた。さらに、河川中や排水中の大腸菌モニタリングの観点から、チロシナーゼリアクターと酸素電極検出器から構成されるフローインジェクション分析(FIA)システムによる大腸菌数の連続測定を試みた。その結果、1〜2時間の培養時間で培養液中の大腸菌濃度に依存したピーク電流が得られ、10^4個ml^<-1>までの大腸菌数計測用フローシステムが確立できた。 2)枯草菌計測システム 枯草菌の分泌酵素であるペプチダーゼ活性とL-チロシンの化学増幅サイクル反応を利用する枯草菌数センサは、測定および培養条件による電流値のばらつきが大きく、菌濃度とセンサシグナルには有意な相関が得られなかった。 3)乳酸菌計測システム 乳酸オキシダーゼを用いた基質リサイクリング反応に基づく化学増幅型乳酸センサを用いると、10^<-8>Mオーダーの高感度な乳酸の定量が可能であることから、同様の測定原理で乳酸菌の低濃度定量が期待でき、現在検討している。
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