本研究で得られた知見を以下に挙げる。 1、キトサンカプセルに6-carboxyfluorescein(CF)を封入し、in vitro回転バスケット法を用いてカプセルからの薬物の放出性を検討した。その結果、日本薬局方第2液および腸内細菌液中ではほとんど薬物の溶出が認められなかった。このように腸内細菌でキトサンカプセルがほとんど崩壊しない理由としてはカプセル表面の腸溶性コーティングによるものと考えられる。そこで次に日本薬局方第1液(2時間)、日本薬局方第2液(4時間)、腸内細菌液(6時間)の順序で連続して試験液を用い、回転バスケット法によりキトサンカプセルの溶出試験を行った。その結果、腸液中で少量の薬物溶出がみられたが、6時間目以降(腸内細菌液または胃液中)に顕著な薬物放出がみられた。このことからカプセルを経口投与した際、小腸で腸溶性コーティングがはがれた後、大腸部において腸内細菌によりキトサンカプセルが崩壊し、封入薬物が大腸部位で特異的に放出されることが示唆された。 2、キトサンカプセル経口投与後の消化管内移動を検討するため、8時間絶食Wistar系雄性ラットを用いてカプセルの経口投与実験を行った。その結果、投与後0-2時間は胃に、2-6時間は小腸部に、6-12時間は大腸部にカプセルが存在することが明らかとなった。 3、モデル薬物であるCFおよびインスリンを封入したキトサンカプセルを用い、in vivo経口吸収実験を行った。なお、インスリン封入カプセルにはタンパク分解酵素阻害剤であるsodium glycocholateを同時に封入した。CF封入カプセルを経口投与したところ、カプセルが大腸部位に存在する8時間目からCF血中濃度の上昇が観察された。またインスリン封入カプセル投与では、6時間目から血糖値の降下が観察され、大腸からインスリンが吸収されることが明らかとなった。 以上の結果よりキトサンカプセルはcolon specific drug deliveryに有効な手段となることが示唆された。
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