研究概要 |
1.モデル高分子としてovalbumin(OVA)を用い、経口投与後の消化管粘膜からの吸収を定量的に評価した。経口投与後のOVAの血液及びリンパ液中への移行性は極めて低く、投与量に対する移行量は血液中で、0.008%,リンパ液中で0.002%程度であった。これは、この様な高分子物質の生体内移行に対して消化管粘膜が強いバリヤ-として働いていることを示している。またこの時、OVAが小腸のみからでなく胃粘膜からも吸収されることが明らかとなった。胃粘膜からの血液中移行量は約0.003%であったが、リンパ液中への移行はほとんど認められず、胃と小腸との吸収メカニズムの違いが示唆された。次に、鼻腔内投与後のOVAの吸収について検討を行い、消化管からの吸収との比較を行った。鼻腔内投与では、投与量が少ないにも関わらずOVAの血中移行量は経口投与に比べて高く、鼻腔内投与が蛋白質などの高分子物質の投与法として有効であることが示された。 2.消化管からのOVA吸収を改善することを目的として、OVAをliposome内に封入して投与した結果、血液及びリンパ液中への移行性は上昇する傾向を示した。これは、特にリンパ移行において顕著であり、liposomeに内封されたOVAの吸収にパイエル板からの取り込みが関与していることが推察された。しかしながら、この場合にも血液中及びリンパ液中への総移行量は、投与量の0.1%以下であり、経口投与によって高分子医薬品を生体内へ充分に送達し、一定の治療効果を得るためには、より高度な経口投与システムの開発が必要であると考えられた。
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