ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、基質のジアシルグリセロール(DG)と反応産物のホスファチジン酸の両者とも種々の生理活性を持つことが報告され、近年は細胞刺激情報伝達系の研究においても注目されている。DGKには少なくとも5種(cDNAクローニングされたもののみ)のアイソザイムが存在することが明らかになっているが、DGKスーパーファミリーを構成するアイソザイム分子の全貌とそれぞれの生理的役割、構造・機能相関など明らかにすべき課題は多い。 本年度は、これらのアイソザイム全てに共通して存在するC3(亜鉛フィンガー構造)とC4ドメインの機能の解析を行った。プロテインキナーゼCの亜鉛フィンガーとの関連(類似性)からDGKの本構造もDG及びホスファチジルセリン(PS)の結合部位であると推定されていたが、DGKαを用いた解析の結果、意外にもDGKの亜鉛フィンガーはこれらの結合部位としては機能しないことが明らかになった(投稿準備中)。C4ドメインのみでもPS依存性の触媒活性を示し、DGやPSに対する親和性が野生型の酵素と同程度なので、この領域にDG及びPS結合部位が存在すると考えられた。尚、現在のところDGKの亜鉛フィンガーの機能は不明であり今後の検討課題である。 次に、最近我々がクローニングに成功したDGKδの酵素学的性質や活性制御機構については、このcDNAをCOS7細胞やSf9昆虫細胞で発現させても活性が弱く解析が進んでいない。しかし、興味あることにDGKδの亜鉛フィンガーがホルボールエステル結合能を有することが示唆され、現在その詳細を検討中である。
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