研究概要 |
本年度は、Trimeresurus albolabris蛇毒より精製したアルボアグレギン-Bの全一次構造の解析を行った。アルボアグレギン-Bはジスルフィド結合によるヘテロダイマーであるため、まず、還元ピリジルエチル化を行い、逆相HPLCを用いてα鎖とβ鎖を分離した。イオンスプレー質量分析の結果、各々の分子質量は、α鎖が16,320±4.7、β鎖が15,085±2.7であった。また、ピリジルエチル化タンパク質のアミノ酸配列分析により、α鎖についてはN末端44残基を、β鎖についてはN末端40残基を決定することができた。その後、ピリジルエチル化β鎖については、AchromobacterプロテアーゼI、アルギニルエンドペプチダーゼ、エンドプロテイナーゼAsp-Nを用いて得られたペプチドの解析により、全一次構造を決定することができた。その結果、β鎖を構成するアミノ酸は123残基であり、アミノ酸配列から計算された分子質量は、上記の測定値とほぼ一致した。また、Bothrops jararaca 蛇毒タンパク質であるボトロセチンβ鎖との相同性は56.1%であった。一方、ピリジルエチル化α鎖は、pH8.0-9.0のトリス-塩酸緩衝液およびリン酸緩衝液に対する溶解液が極めて低く、尿素やアセトニトリルの存在化でも低溶解性のため、中性・弱アルカリ性で作用するプロテアーゼで分解することができなかった。そこで、ギ酸中で反応を行うことのできる臭化シアンおよびペプシンを用いて分解を行った。また、ギ酸に溶解後、pHを中性に調整してAchromobacterプロテアーゼI分解を行った。それぞれの分解により得られたペプチドの解析により、α鎖を構成するアミノ酸は133残基であり、アミノ酸配列から計算された分子質量は、上記の測定値とほぼ一致した。また、ボトロセチンα鎖と51.9%の相同性を有することが判明した。
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