本研究においてはコリン作動性神経を豊富に含むラット胎児中隔野初代培養神経系におけるカルシウム反応性に対する神経成長因子(NGF)の作用を検討した。NGFおよび細胞分化促進因子であるジブチリルサイクリックAMP(dbcAMP)はいずれも培養中隔野細胞のアセチルコリン(ACh)合成酵素活性、自発的ACh遊離量およびACh含量を有意に増加させた。これらの物質は総タンパク量には影響を与えなかった。一方、この培養細胞に高カリウム脱分極刺激を与えた場合、未処理細胞およびdbcAMP処理細胞では有意なACh遊離の上昇はみられなかったが、NGF処理細胞では細胞外カルシウム依存性のACh遊離の上昇が見られた。一方、カルシウムイオノフォアにより細胞内カルシウム濃度を上昇させた場合には全ての細胞群でACh遊離がみられた。以上の結果よりNGFはコリン作動性神経において興奮-分泌連関のカルシウム流入の過程の発現にも影響していることが示唆された。
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