新規アイソザイムP450MUT-2(MALDO)の役割とその反応機構解明に関する研究について、以下の点を明らかにした。 1) P450MUT-2(CYP2C29)の発現調節:ddN系雄マウスの11-Oxo-Δ^8-tetrahydrocannabinolを基質とした時のMALDO活性は、用いた各種誘導剤中フェノバルビタール処理で対照群の約2倍と有意に誘導されたが、3-メチルコラントレン、デキサメタゾンあるいはアセトン処理では有意な活性の上昇は認められなかった。P450MUT-2(CYP2C29)のタンパク質及びそのmRNA含量は、フェノバルビタール処理においてのみ対照群の約2培増加し、MALDO活性と良い相関が認められた。また、雄雌マウス肝のMALDO活性は、4週齢まで加齢とともに上昇、ミクロソーム中のP450MUT-2(CYP2C29)含量と良い相関を示した。現在、mRNAを分離、その変動について検討中である。 2) MALDOの種差:雌ニホンザル肝ミクロソームより、9-アントラアルデヒドのMALDO活性の主要な分子種として、N末端アミノ酸配列から2Bサブファミリーに属することが推定されるP450JM-Cを精製した。 3) CYP2C29と高い相同性を有するcDNAのクローニング:CYP2C29をプローブとして、129/J系雄マウス肝のcDNAライブラリーから、全長1718bpのcDNAをクローニングした。その推定されるアミノ酸配列から、N末端側から2残基に相当する6bpを欠いたものであった。このcDNAのCYP2C29との比較では、7塩基の置換が認められ(相同性 99.5%)そのうちアミノ酸の置換は1残基(106Ile→104Met)のみであった。CYP2C29は、C57BL/6Jマウス肝のcDNAライブラリーよりクローニングされたことから、今回得られたクローンは系統の違いによるP450MUT-2のalleic variant(CYP2C29v)と推定された。 4) cDNAの発現:P450MUT-2(CYP2C29)cDNAの発現ベクター(pCMV4)組換え体を作製、その方向を制限酵素処理により確認した。現在も本研究は進行中であり、今後COS細胞に導入、その培養細胞を用いてMALDOの性質並びにその反応機構について検討する。
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