研究概要 |
1.ウサギ血小板において,内因性ホスファチジン酸(PA)のホスホリパーゼ(PL)A_2活性化作用を検索する目的で,内因性PLDを活性化させ,膜リン脂質からのPA含量を増大させることを試みた。(1)[^3H]グリセロールまたは[^3H]アラキドン酸で標識した洗浄血小板をphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)とイオノマイシンの両者で刺激すると,PA生成とエタノール存在下でのホスファチジルエタノール(PEt)生成が確認できた。(2)次に,標識血小板をPMAで前処理した後膜画分を調製し,これに50μMCaCl_2とguanosine 5'-O-(3-thiotriphosphate)(GTPγS)を添加すると,PMA(〜1μM)およびGTPγS(〜50μM)の濃度依存的にPA量の増大とアラキドン酸遊離が生じた。この際,エタノール存在下ではPEt生成に伴いPA生成が抑制され,アラキドン酸遊離量も減少した。PAホスホハイドロラーゼ阻害剤のプロプラノロール存在下では,PA生成量に有意な変化はなかった。 2.血小板膜画分に外因的にPLD(Streptomyces chromofuscus由来)を添加すると,この酵素濃度および作用時間依存的に膜リン脂質からのPA生成が生じ,それに相関してアラキドン酸遊離量が増加した。このアラキドン酸遊離はp-ブロモフェナシルブロマイドの前処理により阻害された。 3.無傷血小板に外因的にPAを添加すると,膜脂質からのPA生成が誘起され,この反応はインドメタシンの阻害を受けなかった。また,添加PAの濃度依存的にセロトニンの放出反応が認められ,細胞骨格系タンパク質(アクチン,ミオシン)の重合や40kDaタンパクのリン酸化も確認できた。 血小板膜脂質から内因的に生じたPAもPLA_2活性化作用を有すると思われ,生理的条件下で誘起されるPLDの活性化がPA生成を介してPLA_2活性化の増幅に寄与する可能性が示唆された。
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