興奮性アミノ酸であるグルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体が、記憶・学習の基礎と考えられている神経可塑性やけいれん、神経細胞死、変性など多岐にわたり、しかも生体内で非常に重要な役割を果たしていることが知られている。代表的なNMDA受容体の拮抗薬であるCH-MK-801を動物に投与すると、脳のある部位(posterior cingulate cortexおよびretrosplenial cortex)に神経毒性を引き起こすことが報告されている。又、抗精神薬薬であるハロペリドールの前投与がMK-801の神経毒性を抑制する事より、シグマ受容体の関与が指摘されている。そこで、選択的なシグマ受容体に結合する薬物(NE-100および4-PPBP)を用いてMK-801の神経毒性のメカニズムについて調べた。神経毒性の指標として熱ストレス蛋白質の発現を免疫組織化学的手法を用いて研究を行なった。選択的なシグマリガンドの前投与によってMK-801によって発現される熱ストレス蛋白質(HSP-70)が変化しなかった。これらの結果より、NMDA受容体の拮抗薬であるMK-801によって引き起こされる神経毒性にシグマ受容体が関与していない事が示唆された。
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