(1)制がん剤(メソトレキサート(MTX))の効果増強を目的として、ヒト白血病細胞HL60細胞を対象に細胞培養系での細胞動態および生細胞数に及ぼす投薬タイミング(細胞周期の中での各時期)の影響に関する検討; MTXの抗腫瘍効果は、同調後の時間と関連して有意に異なることが明かとなった。この機序を細胞の感受性の側面から検討したところ、DNA合成能にも経時的な変化が認められ、MTXの抗腫瘍効果の経時的変化と対応していた。すなわちS期特異性薬剤MTXの抗腫瘍効果は、DNA合成が高まる時間帯に増強され、DNA合成が低下する時間帯に軽減された。また薬物動態の側面から検討したところ、MTX細胞外放出は、DNA合成が低下する時間帯と比較してDNA合成が高まる時間帯に細胞内MTX濃度は有意に高い値を示し、MTXの抗腫瘍効果の経時的変化と対応していた。すなわち、MTXの抗腫瘍効果発現の変化の機序として細胞の感受性および細胞内MTX濃度の変化の関与が考えられる。 (2)制がん剤の副作用軽減を目的として、実験動物(マウスを対象に血中白血球数および骨髄中有核細胞の細胞動態を指標とした骨髄抑制に及ぼす投薬タイミング(細胞周期と関連した一日の中での時刻)に関する検討; 白血球数には、休息期の明期に高値を示し、活動期の暗期に低値を示す有意な日周リズムが認められた。この日周リズムのピーク時とトラフ時にMTXを投薬し、骨髄抑制に投薬時刻による有意な差異が認められた。すなわち、MTXの毒性は休息期の明期に増強され、活動期の暗期に軽減された。この機序を生体の感受性の側面から検討したところ、DNA合成能は毒性の高まる時間帯に高値を示し、毒性の低下する時間帯に低値を示した。また薬物動態の側面から検討したところ、薬物動態値は毒性の高まる時間帯に高値を示し、毒性の低下する時間帯に低値を示した。すなわち、MTXの毒性発現の変化の機序として生体の感受性および薬物動態の関与が考えられる。 以上の結果は、裏面に示す学会誌に発表予定であり現在海外学会誌に投稿中である。
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