申請者が開発した動脈硬化マウスの大動脈への脂質蓄積機序を検討し、以下の知見を得た。 1.申請者が開発した動脈硬化マウスの血清脂質はマクロファージに著明に取り込まれた。また、動脈硬化マウスより単離したマクロファージへのリポタンパク由来の脂質の取り込み能は有意に増加した。 2.次に、本動脈硬化マウスに抗酸化作用を有する脂質低下薬であるプロブコールを投与して、上記と同様に検討を行った。無投与の動脈硬化マウスに比べてプロブコール投与動物では、血清脂質のマクロファージへの取り込まれた量の増加は著明に抑制されたが、マクロファージの脂質取り込み能には影響はみられなかった。 3.さらに、動脈硬化マウスにコレステロール代謝酵素の一つである、acylcoenzyme A:cholesterol acyltransferase(ACAT)の抑制薬で脂質低下作用を有するメリナミドを投与して上記と同様の検討を行った。無投与の動脈硬化マウスに比べてメリナミド投与動物では、血清脂質のマクロファージへの取り込まれ量は僅かに抑制されたが、マクロファージの脂質取り込み能の増加は著明に抑制された。 以上の結果より、申請者が開発した動脈硬化マウスの血清脂質がマクロファージに取り込まれ易くなっていること、マクロファージ自身の脂質取り込み能が増加していることが明かとなった。また、前者の作用はプロブコールで抑制され、後者の作用はメリナミドで抑制されることが明かとなった。これらのことより、本動脈硬化マウスの大動脈への脂質蓄積機序として、1)増加した過酸化脂質により血清脂質が変性を受けてマクロファージに取り込まれ易くなっている、2)リノール酸自身(変性脂質または過酸化脂質ではなく)がマクロファージのACATを活性化し、脂質を取り込み能が増加していることが示唆された。
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