研究概要 |
1)バント3関連蛋白質の検出と精製 すでに免疫組織染色法によってその存在を確認していたラット脳のバンド3関連蛋白質を、ウェスタンブロッティングによって更に確認した。主として染まる約40kDaのバンドは、ミトコンドリア、ミクロソーム、シナプトソームなどの膜分画に多く見られた。このタンパク質に注目し、精製を行った。ラット脳の膜分画を4%SDS/8M Ureaに可溶化し、ゲル濾過(TSK G-3000SW)にて粗分画に分け、逆相HPLC(Phenyl 5PW)でrichとなったフラクションを用いて、SDS-PAGEゲルからの切り出し、抽出を行った。切り出したタンパク質はさらに逆相HPLCで精製し、銀染色によっても、ウェスタンブロッティングによってもシングルバンドであることを確認した。 精製したタンパク質の一次構造を決定する目的で、まず直接アミノ酸シークエンサーにかけたが、全くアミノ酸配列は得られず、N末端はブロックされていると考えられた(ブロックの性質については未解析)。内部一次構造を得るためにリジルエンドペプチダーゼや臭化シアンによる切断を行い、逆相HPLC(Cosmosil 5C8,Chemcosorb 300-7Dph)で分離できたペプチドを順次アミノ酸シークエンサーにかけた。得られた配列はデータベース検索(BLAST)を行ったが、既知のタンパク質ではないようである。現在、判明したアミノ酸配列からオリゴヌクレオチドを作製し、抗体と併せて、ラット脳のcDNA libraryのスクリーニングを開始している。 2)各種病態におけるバンド3タンパク質ファミリーの変化 尿沈渣中に存在する尿細管上皮細胞のバンド3タンパク質が、各種腎疾患において変化している(部分分解と考えられる)ことを,沈渣細胞のウェスタンブロッティングによって検出した。 3)培養細胞におけるバンド3関連蛋白質 PC12,MIN6,HepG2などの分泌系細胞について、ウェスタンロッティングを行ったところ、ラット脳で検出された40kDaのバンドが同様に検出され、他にも細胞の形態変化に相関するように発現されるいくつかのバンドが見られた。1)において精製したラット脳のタンパク質に対して抗体を作製し、これらの細胞でも染めてみる計画である。
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