研究概要 |
本研究の目的は、パソコンを用いて人の運動中の心電図波形解析を実施し、その運動中の変化と血液中カテコラミン等の代謝産物、および運動時の突然死との関連が示唆されている血中カリウム濃度等の変化の相互関係を検討することで、適切な運動処方作成のための簡便な基準を作成することである。本年は特に運動に伴う心電図T波形の波形変化と血中のカテコラミンとカリウムの変化の関係について調べた。健常人男性6名を対象にし、自転車エルゴメータを使用して、80watt,140watt,200wattの4分間定常負荷を段階的に与え、それぞれの負荷段階の3分目に動脈血液を採取し、カリウム濃度、血液ガス、カテコラミン濃度を測定した。また同時にベクトル心電計を用いて、ベクトル心電図をフランク誘導法にてデータレコーダに記録するとともに、心電図をリアルタイムにA-D変換を行いコンピュータに取り込んだ後波形解析を行った。その結果、ベクトル心電図のT波の合成ベクトルの最大振幅は負荷の増加とともに減少し、運動終了には増大した。この変化は血中カリウム濃度およびカテコラミン濃度の両者の変化と相反的な動きを示した。この結果より、運動中の心電図T波高の変化を解析することで、血中カリウム濃度、カテコラミン濃度の変化をある程度予測できる可能性が示された。今後はさらに運動時の心電図T波波形の周波数解析を加え、血中の代謝産物の変化との関連を詳細に検討してゆくことが必要であると考えられる。
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