本研究は、発育に伴う歩行様下肢運動の自動化水準と上肢運動の挿入時相の変化について検討した。被験者には、4〜11歳の男子127名と女子112名、および18〜21歳の男女各21名とした。被験者には、立位による毎分120回の足踏み運動中に、任意のタイミングで左右同時の上肢運動(掌屈運動によるタッピング)を一過性に挿入させた。試行は3回繰り返した。手掌と足底の接地タイミングを検出し、上肢運動の挿入時点と上肢運動による足踏み運動の周期の乱れを分析した。足踏み運動の自動化水準は、上肢運動挿入時の周期の乱れの大きさで評価した。 4歳と5歳では、上肢運動を挿入した時点の足踏み運動の周期が大きく乱れた。しかし6歳以降では、その乱れの大きさは成人と同様に極めて小さかった。また6歳では、男子に比べて女子の方が上肢運動挿入時の足踏み運動の周期の乱れが有意に小さかった。 上記の対象に対応して、上肢運動の挿入時点にも変化が認められた。すなわち、若年者では上肢運動が足踏み運動の全ての時相で均等に挿入されていた。しかし年齢が増すにつれて、上肢運動の挿入が左足ないしは右足が接地する直前から直後までの時相に集中するようになった。この足踏み運動の時相は、先行研究で上肢運動の挿入による足踏み運動の周期の乱れが小さいことを確認した時相であった。発育に伴う上肢運動の挿入時相の変化は女子では6歳から認められ、男子に比べて1歳早かった。 以上の結果より、(1)歩行様下肢運動の自動化水準がほぼ6歳で成人と同じになること、(2)自動化が進む過程で一過性の上肢運動が下肢運動への干渉が小さい時相で行われるようになること、(3)これらの変化は女子で早いこと、が明かとなった。
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