テニスのフォアハンドストロークの学習過程について、体育実技の受講生の中からテニスを初めて行う者を対象として希望者を募り、希望した10名について実験の趣旨を説明したのち、被験者として実験に参加してもらった。実技受講前・受講中・受講後の3回に渡ってフォアハンドストロークをビデオにより撮影し、動作分析を行った。それとともに、各被験者には各授業後に内省報告を求め、学習の意図や結果に対する認知などについて調べた。さらにエキスパートとして大学の運動部に所属するテニス選手を対象として、被験者と同様の実験条件において、フォアハンドストロークをビデオに収め同様に分析した。これまでのところ、2名の被験者とエキスパートについてはすでに分析済みで、主動作自体のパフォーマンスの向上は認められ、15週の実技の授業において少なからず学習効果があり、エキスパートとの比較において学習途中であることが認められた。また、特に準備動作として、ボールが投げ出される時点での姿勢(股関節や膝間接の屈曲)に学習効果が認められ、それが主動作のパフォーマンスの向上につながったものと考えられた。この準備動作においてもエキスパートの動作に近づきつつあるものとして考えられた。これらの結果については脳内での運動プログラムの形成や動作のフィードフォワード制御といった観点からの解釈や予測性姿勢制御のメカニズムからの解釈も可能となり、論文としてすでに投稿中である。今後はさらに残りの被験者についても分析を進める予定であるとともに、ボールとの対応の中での準備動作の学習に焦点を当てた研究を計画・進行中である。
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