本研究は、体育について学校全体として組織的に継続的に研究実践(研究授業)を積み重ねている学校における子どもたちの体力、運動能力が、結果として高まってくるという仮説の検証を試みようとしたものである。 I市内には、ほぼ同時期に体育の研究指定校となり、その活動をほぼ10年間に亘って継続してきた小学校が3校ある。それら3校(A群)の児童の体力と、市内のそれ以外の学校を任意に2校(B群)抽出し、児童の体力、運動能力の過去7年間の推移、学校内外での児童の運動生活、児童の体育観等及び、教師の体育についての価値観、指導理念、指導に当たっての力点等について調査した。 調査の結果、教師の体育についての価値観、指導理念等については、B群の教師に比し、A群の教師に体育の内容となるスポーツの非実用的側面の価値を重視し、指導場面においても画一的な技術指導を避けると回答する者の割合が高くなることが明らかとなった。しかしながら、A群の児童とB群の児童との間の、体力、運動能力に有意な差を認めるまでには至らなかった。ここでの結果の原因として、特に学校外社会に於ける子どもたちの運動生活の様子に違いが認められること。また、教師が体育授業場面でスポーツのプレイ性を重視した授業を組み立てていくことと、運動好きの子どもを育成していくということの直接的な連関を認めることができなかったことが起因しているものと考えられる。 本研究では、教師の指導理念、指導に当たっての力点に組織的、継続的な研究授業の成果をみてとることができた。現在、児童の側に一定の成果を認めることができないか、得られた調査結果からさらに詳細な分析を行っているところである。
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