本研究の目的は、局所的な筋力・持久力トレーニングが、筋化学受容器による血圧調節に影響を及ぼすかどうかについて検討することである。トレーニング効果を検討する実験には、横断的研究と縦断的研究があり、個人差や環境による影響を少なくしてトレーニングの影響をより明らかにするためには縦断的研究が必要である。 そこで本研究では、4名の健康な男子について6週間の前腕のトレーニングを行わせ、その前後で筋内化学受容器反射の特性を測定した。トレーニングの内容は、30%MVCの強度で30回/分の頻度で疲労困憊までハンドグリップを行うという、低強度の持久的トレーニングであった。得られた結果は、以下に示すとおりである。 1)トレーニング前後で、前腕のハンドグリップ時の最大筋力には差がみられなかった。 2)トレーニング前後で、30%MVC強度のハンドグリップ運動の疲労困憊までの継続時間は、すべての被験者で増加した。このことから6週間のトレーニングによって前腕の筋持久力は増加したものと考えられる。 3)筋内化学受容器反射の特性を、筋内pHの低下と血圧上昇との関係より求めたところ、トレーニングによってその関係が変わる傾向がみられた。すなわち、少ない筋内pH変化でもって大きな血圧変化が生じるようになるようである。 現段階では、被験者が申請時の数より少ない4名しか終了していない。今後継続して、合計10名のデータをまとめる予定である。筋内化学受容器反射にトレーニング効果のあることが示唆されているため、今後は筋内化学受容器を特別に刺激するようなトレーニング法を模索するとともに、どのような機序でトレーニング効果が発現するのか等に関して研究を進める予定である。
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