研究概要 |
本研究では,肥満児を対象に,運動負荷時の主観的強度(Ratings of Perceived Exertion;RPE)を測定し,肥満児の運動に対する知覚応答を検討した.また,同時に非肥満児についても同様の測定を試み肥満児との比較を行った. 対象者は単純性肥満児14名(年齢;12.1±2.1歳,身長;152.7±12.4cm,体重;63.4±15.5kg、肥満度;47.6±13.7%)と協力が得られた非肥満児5名(年齢;12.8±0.7歳,身長;160.5±6.0cm、体重;47.2±4.2kg、肥満度;-1.9±5.5%)であった.運動負荷試験は自転車エルゴメーター作業により実施した. 肥満児のHRは高強度の負荷レベルで非肥満児よりも低く,RPEは中〜高強度で非肥満児よりも高かった.従って,肥満児のRPE/HRは中強度以上で非肥満児よりも高く,肥満児では同じ生体負担度を非肥満児よりもきつい,あるいは苦しいと知覚していた.特に,運動療法に取り組む際,目標とされる60〜100Wの負荷レベル(HRでは129〜155拍/分)でそれが顕著であったことから,肥満治療において肥満児に推奨できる運動としては有酸素運動が考えられるが,彼らが取り組み易い運動はもう少し負荷の低い運動で構成される方がよいかもしれない. ところで,肥満児のRPEの変動係数は非肥満児より有意に高く,大きな個人差が認められた.特に,この個人差は低い強度(0〜40W)で大きく,この負荷で「非常に楽である」とする児がいれば,すでに「ややきつい」とする児もいた.このように肥満児には,運動中の生体負担度と知覚応答との間に非肥満児より大きなズレが認められるため,肥満児各個人に適した運動指導が構築される必要があると考えられた.
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