近年、授業の目的、内容、学習者の様態なでに応じて指導法を選択的に適用していく考え方が受け入れられるようになってきた。 報告者は、こうした発想をいち早く提唱したムスカ・モストンの「教授スタイルの連続体モデル」を援用し、従来よりなされてきた「問題解決学習か系統学習か」といった二者択一的論議が不毛であることを指摘するとともに、わが国に適した学習指導スタイルを整備していくことの必要性を主張してきた。 本研究では特に、現行の学習指導要領に示されている「学習過程のステージモデル」に焦点をあて、これが教授スタイル論的な視点からみてどのように位置づけられ、またどのような問題点をはらんでいるのかを明らかにしようと試み、以下の諸点を導いた。 1)「楽しい体育」論では、素材を加工する際の視点が方法的視点に留まっており、内容的視点が欠落しているため、教材としての要件が満たされていない。 2)「楽しい体育」論で提唱される「めあて学習」は、未開の知識・技術の「生産」なのではなく、既存の内容の「再生産」である。したがって、問題解決学習とは厳密に区別して、誘導発見学習、あるいは課題解決学習として位置づけるべきである。 3)子どもの内発的動機に依存して自主的・自発的学習を待つのではなく、教師が次の諸点に積極的に関わることが重要である。 a)子どもが各自の能力に見合った課題を解決でき、合理的・系統的な学習が可能となるようなプログラムを準備しておくこと。 b)授業に積極的に介入し、授業のイニシアティブをとること。 c)予備的運動を工夫し、子どもに「運動のアナロゴン」を身につけさせておくこと。 本研究は、わが国に適用可能な学習指導スタイルを構築するための基礎的資料として位置づけられる。有効性が見通されるいくつかのスタイルをどのような基準で適用していくのか、そのストラテジーを確立していくことが今後の課題となる。
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