[研究目的]激しい運動時には骨格筋中のアデニンヌクレオチドの異化が亢進し、その代謝物質であるヒポキサンチン、キサンチンが肝臓でキサンチンオキシダーゼにより尿酸に代謝されて、血中に放出され血漿尿酸値が上昇する。しかし、運動性の高尿酸血症は時には運動後24時間後まで持続する。この原因は、激運動後に骨格筋でのプリンヌクレオチドのde novo合成とそれに伴うプリン体代謝が亢進し、骨格筋よりのプリン塩基の放出が持続するためではないかと推測されるが、未だ証明されてはいない。そこで本研究では、ラットに激しい走運動を負荷した後に放射性標識^<14>C-グリシンを静注するin vivoのトレーサー実験を行い、運動後にde novo合成されたプリンヌクレオチドが代謝され生ずる尿酸について調べ、運動後の持続的な高尿酸血症の発症原因についての解明を試みた。 [方法]12週令のウィスター系雄ラットを(1)運動負荷+^<14>C-グリシン投与、(2)安静+^<14>C-グリシン投与の2群に分け、両群ともウリカーゼの特異的阻害剤ポタシウムオキソネイトを実験開始2時間前に腹腔内投与した。運動負荷は速度漸増法によるトレッドミル走を疲労困憊に至るまで負荷した。運動終了直後に37kBqの^<14>C-グリシンを尾静脈より静注し、その後は安静を保持した。放射性標識物質の静注1、2、3、6時間後に尾静脈より採血し、血漿中の^<14>C-ヒポキサンチンと^<14>C-尿酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と接続したベータ放射性液体サンプル連続測定装置にて測定した。 [結果・考察]血漿中のヒポキサンチンと尿酸は運動1時間後より増加し始め、3時間後でピークを示し、6時間後まで高値を維持した。また、血漿中の^<14>C-ピポキサンチンと^<14>C-尿酸も、運動2時間後より増加し始め、3時間後でピークを示し、6時間後まで高値を維持した。この結果より、運動後の持続的高尿酸血症には運動後のde novo合成由来のプリン体の異化が関与していることが示唆された。
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