本研究は、アメリカ合衆国シカゴ都市圏における日本系企業による直接投資の特徴を明らかにすることを目的とした。研究方法として、現地の関係諸機関において聞き取りと資料収集を行うとともに、その結果をふまえて日本系企業に対してアンケート調査を行った。シカゴ都市圏への日本系企業による直接投資は、実質的に1970年代後半に始まり、日本系企業の数は1993年には605に達した。その増加の内訳は、空間面ではシカゴ都市圏内のシカゴ市郊外における伸びが大きく、周期間に日本系企業は263企業から462企業へと1.8倍に増加した。その分布は、シカゴ市中心部とオヘア空港周辺へのスケールを異にした集中パターンを示すが、日本系企業全体に占めるシカゴ市中心部の比重は低下し、立地場所の郊外化が進行し、シカゴ都市圏に立地する産業全体の郊外化の動きを追随する形となっている。業種別企業数は1986年時点でシカゴ市内では、金融・サービス・貿易業が、近郊では一般機械・電気・貿易業が上位を占めたが、1993年にはシカゴ市内では変化がない一方、郊外ではサービス・電気・一般機械・貿易業という順序になり、サービス業の進出が著しい。当該地域への立地要因は、イリノイ州を選択した理由としては、イリノイ州が全国の地理的中心に位置すること、顧客企業の存在、中西部での市場拡大が主なものであり、シカゴ都市圏内の現在地を選択した理由としては、シカゴ市内に立地した場合は、シカゴへの近接性、土地建物の得やすさが、郊外に立地した場合は、オヘア国際空港への近接性、顧客企業の存在が主たる理由であった。一方、日本系企業の属性面の特徴は、従業員および管理職双方でのアメリカ人の比率の増加、また取引先企業に占めるアメリカ企業の増加にみられる「現地化」である。したがって、シカゴ都市圏の日本系企業の進出過程は、空間面・属性面双方における現地化の過程としてとらえられる。
|