本研究では、自然画像や描画による情報提示において、画像品質の違いが学習者の認識効果にどのような影響を与えるかを調べることを目的として各種実験を行った。 1.コンピュータや通信技術の進展により、動画像を手軽に伝送、蓄積することが可能となっている。その際、画像圧縮が大きな役割を果たすので、圧縮に伴う画像品質の劣化が学習に与える影響を調べる必要がある。まず、画像符号化・復号装置(CODEC)による画像品質の劣化を定量的に表すために、新たに開発した標準画像と画像処理方法を用いた動画像劣化評価法を提案した。これにより、CODECの画像伝送特性を表す新しい3つのパラメータ(遅延時間、解像度立ち上がり速度、飽和解像度)の測定を可能にした。 2.静止画像の解像度の違いによる学習者の認識への影響を調べるために、高精細画像を提示できるハイビジョンを用いて、心的回転の効果を調べる実験を行った。回転角が異なる2つの描画図形を同時に提示し、2つが同一であると判断できるまでの時間を測定するシステムを構築し、提示解像度を各種変えて実験を行った。被験者を用いた実験の結果、解像度によって画像の認識時間が変わること、必ずしも高精細な画像が認識時間の点で優れているとは限らないことなどを見いだした。また、提示図形が多角形の場合、複雑になるほど心的回転の効果が出にくくなることなどを明らかにした。 3.コンピュータ・ディスプレイに文章を提示する際、提示形式の違いにより文章の見やすさがどのように変化するかを調べるために、文章を(a)段落を切らずに提示、(b)段落ごとに改行とインデント、(c)段落ごとに空白行とインデント、を施したそれぞれの場合について、被験者を用いて実験を行った。その結果、文章内容に関する設問に対し、段落あるいは空白行を設けることで、解答時間が短くなり正答率が上がる効果を見いだした。
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