年度の前半には、平成5年度文部省科学研究費で開発した『音声教育基本語彙データベース』に基づいて単語レベルでの発音調査票を作成して、バントゥー語母語話者と韓国語母語話者を対象として録音資料を収集した。また、パーソナルコンピューターでその基本周波数の分析を行った。 この結果、実験の手続きに問題のあることが分かった。本研究は「外国人日本語学習者がどのように日本語の分節音と韻律を習得していくか」を調査することを最終的な目標としたものであるが、学習者の発音した単語のアクセント型を日本人研究者複数が聴覚印象で判断したところ、大きな不一致が見られたのであった。学習者が日本語のアクセントを習得しているかいないかを、どう客観的に判断するかという根本的な問題に直面したのであった。 これを踏まえて、年度後半には韻律を操作した合成音を学習者に聞かせて、そのアクセント型を判断させる実験を繰り返した。日本人には必ず「高低」「低高」と聞こえるようにピッチを操作した2拍の合成音をメキシコ人、インドネシア人、中国人の3つの被検者グループに聞かせ、どう判断するかを調べたところ、中国人はきわめて正確に判断すること、メキシコ人には判断の誤りが多いことなど、明らかな傾向の差が認められた。 さらに同じ実験を韓国人高校日本語教員80名に対して実施する機会を得て、データを得ることができた。このデータは現在分析中であるが、この実験に限って言えば特殊拍の配置がピッチの聞き取りに大きな影響をもたらしたことが明らかであった。 これら一連の聴覚実験の成果に基づき、今後は3拍以上の単語で進めていくことを計画している。
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