研究概要 |
・計測が必要な行動形態とその計測法 本年度は,この研究の重要な応用分野のひとつと考えている養護施設内の痴呆老人の行動計測に対象を絞り,詳しく検討を行った.一般に老人養護施設内では,安全上の理由により階段の使用は制限している場合が多い.そのため,計測が必要な行動形態は,歩行,座位,立位,臥位の4種類となった. これらの計測に関し,以下の方法を試みたところ良好な結果を得た.まず,被験者の胸部に加速度と角速度のセンサを取り付け,歩行,静止,臥位の3つの状態が計測する.上記4種類の行動形態のうち,歩行と臥位の2つは,この計測結果からただちにわかる.しかし,静止状態が座位あるいは立位のどちらを意味するのかは,センサの情報だけではわからない.そこで,立位/座位を推定するために,人間の行動遷移ルールを用いた.すなわち,人間が臥位状態から歩行状態に移行する際には,臥位→座位→立位→歩行という一連の遷移を生じる.したがって,ある瞬間に計測された静止状態の直前の状態が歩行であつた場合,その静止状態は“立位"であると推定できる. ・環境地図情報を用いた経路推定 まず,センサを装着した被験者の歩行運動に関して,実際の位置とデッドレコニングにより推定された位置の,確率的な関係(平均・分散)を予備実験により求めておく.すると,歩行が進むにつれて,現在位置として可能性のあるある領域が,次第に大きく広がってゆく誤差楕円として逐次的に求まる.そして上記の行動推定により得られた,例えば座位という情報と,地図と誤差楕円より得られる可能性のある椅子の位置とを用いることによって行動経路を推定し,良好な結果を得た.
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