研究概要 |
計算機による画像理解には,画像処理によって得られる特徴量を抽象化していくボトムアップ手法だけでは不十分であり,認識結果を画像処理にまで戻って検証・修正するトップダウン手法が不可欠である.本研究では,トップダウン手法を用いた画像認識システムを構成する上で不可欠な画像処理である,制約充足型の画像処理において,従来あまり注意深い検討なしに使われていた制約の表現について,より汎用的で能力の明確な表現形式として,数理的な表現を考え,それを実現した. 数理的表現による制約は,変形しない形状の検出等の自由度の小さいものは容易に記述出来るが,自由度を大きくするに従って記述は複雑になり,さらに形状が滑らかである等の自由度の大きいものは,また記述が容易になるという性質がある.そこで,本研究では,これらの中間にあたる,区分的に滑らかな制約の表現を実現した. 得られた成果を以下に示す. 1.不連続部分の性質が明らかである1次元信号に対して,有効な手法であるGNC法を2次元に拡張し,区分的に滑らかな解の分布に対して適用出来る手法を提案した. 2.背景の前を車両等が通過する画像におけるオプティカルフローは,区分的に一定のオプティカルフロー値を取る.このような制約を持つ場合,区分的に離散値を取る正則化手法が有効である.本研究では,与えられた近似解を初期値として,これらの離散的な値のみを取る関数を制約として用いた,オプティカルフロー推定法を提案した. 3.上記と同じ条件において,オプティカルフローが特定の値しか取らないことを利用して,投票を用いたオプティカルフローの初期値計算法を提案した.特に,従来の同様の手法ではあまり検討されなかった,アルゴリズムの適用限界あるいは,結果の精度,さらにアルゴリズムの安定性について解析を行った.
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