研究代表者は申請した研究計画に沿って、以下のように研究開発を進めた。第一に、領域を神経内科領域に絞り、既存の医療情報がどのような診療行為から発生する患者情報であるか調査し、そのカテゴリー分けをまず行い、それがオブジェクト指向分析の上からどのような構成をもつかを検討した。 この分類から、神経内科学的領域については病歴の聴取、神経学的所見、画像検査、生理学的検査との間のリンクがきわめて重要であり、特に診断過程の約50学的所見によるものであることが判明し、このようなリンクの構造をオブジェクト指向分析によってスキーマ上に構成した。 次に、このスキーマ構造に基づいて、スキーマ構造にのっとったデータ生成部の構築を行った。この生成部は、人間と計算機とのインターフェイスであり、医師が自らの自然な言語によって入力し、この自然言語で記載された入院患者の病歴、退院時要約をその時間関係を基本にしながら病態のオブジェクト構造に併せてイベント系列に要約するシステムを研究費で購入したSun C++によって開発した。オブジェクト指向プログラミングはこのようなスキーマをそのままコンピュータのプログラムとして実現したものであり、システムの開発仕様がシステム構築の上でも重要であると同時に、仕様そのものの構造を移植することが容易であった。 以上の開発したシステムを疑似的に神経内科の過去の症例50例を用いて検証した。結果として、このシステムはイベント系列の評価に伴い、必要な診療情報をイベント駆動型で検索することが90%の症例で可能であり、神経内科学的領域においては、このようなオブジェクト指向データベースの手法が有効であることが示唆された。
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