研究概要 |
本研究は広域的社会資本整備における財源負担問題の一解決策として,開発利益還元方策を具体的に提案し,一連の研究成果をシステム化することにより実用化を図ることを目的としており,研究成果として以下を挙げることができる. (1)取引事例の収集 本研究では,複数の自治体に跨る既存の鉄道路線および分析対象年を選定し,それら自治体で実際的に行われた取引事例データを不動産業者のヒアリングおよびデータを購入することにより数百地点のデータを収集し,地図情報として整備した. (2)取引事例の現地調査 また,本研究では取引事例に記載されていない地点情報を確保するために,現地調査を行い,当該地点属性を把握した.具体的には,調査地点毎の写真撮影等を実施し,地点毎の詳細かつ実態に即した情報を得,さらに,データベース化を図った. (3)ネットワーク・データの構築 本研究の分析対象が鉄道整備であることから,鉄道および道路という交通機関毎の地点別交通利便性に関する情報を整備するために,分析対象地域における鉄道および道路ネットワークを作成し,交通機関別地点時間距離および費用を算出するための,ネットワーク・シミュレーションを実行した. (4)開発利益還元方策の検討 前項までの,開発利益の計測に関するデータ収集および分析とは異なり,ここでは,開発利益が計測された後の問題となる,公共への還元方策について検討した.特に,本研究では地点毎の開発利益の徴収方法およびその額をはじめとして,自治体間の財源負担割合のあり方について,専門家のヒアリングを交えて検討し,種々の代替案をメニュー化することにより,後述する対話型システムに結び付けた. (5)対話型システムの設計および構築 以上の研究成果を実際に自治体で適用し得るものにするため,データ・ベースを構築し,対話型のシステムとしてしシステム化した.その際,システム構築の専門家に対するヒアリングを行い,システムが具備すべき条件を整理し,本システムに反映させた.
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