研究概要 |
AR-AICモデルを用いて検出した定常短周期微動による浅部地下構造推定 短周期微動のアレイ観測によりその位相速度から地下構造を推定する場合,解析対象区間に非定常なノイズが含まれているとその推定精度の信頼性が低下する.本研究では,以下の3つのテーマで研究を進めた.1)パソコンによる現地での観測,2)多変量AR-AICモデルによる微動の定常性の検討,3)地下構造の推定. 1)本研究申請備品費で購入したノートパソコンとAD変換unitの組み合わせによる記録機を用いて,盛岡市仁王小学校等で微動のアレイ観測を行った.従来の分解能の8bitから14bitへ精度が向上し,相対的にパワーの小さい周波数帯での振動も観測可能となった.及び,メモリの増設により最大16成分で1時間以上の連続観測が可能となった. 2)一変量及び多変量のAR-AICモデルを用いた定常性検討プログラムを作成し,アレイ観測記録に適用した.その結果,定常性が満足される記録の解析から理論から期待される場合とほぼ一致した位相速度-周波数関係(分散)が見いだされることが判明した.ただし,その場合,アレイ長から決定される解析可能周波数帯に注意する必要がある. 3)上述の解析区間選定法と従来の周波数-波数解析法により,盛岡市内の数地点で地下構造を推定した.岩手大学構内の結果では,ボーリング資料から期待される地下速度構造と良い一致を示す.地下構造推定の際,Haskellの理論位相速度と観測位相速度を多数の層構造モデルを試行錯誤的に比較する従来の方法から,インバージョンにより地下速度構造を求める方法を開発した.未知変数をs波速度のみの場合と層厚の場合の2つのインバージョンを交互に繰り返す方法も開発した. 残された課題として,本手法によりどのくらい地下構造推定精度が向上したか定量的に把握する必要がある.
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