本研究では高強度X線レーザーを固体ターゲット上に集光し、相対論的速度を持った高密度の電離フロントを固体中に形成し、それによるX線領域(X線レーザー)での波長変換の可能性を理論的に探ることを目的としたものである。 本研究により、X線レーザーによる選択的電離により電離フロントが形成される可能性があることがわかった。X線の飽和吸収過程を利用し、電離フロントの速度を光速に近づける(相対論的速度)ことを利用した本方式では、X線の飽和吸収過程が最も重要な点である。しかしCRモデルにより計算を行った結果、励起レベルの数により必要なX線レーザー強度が変化することがわかった。これは、励起レベルの数とともに再結合する割合が増えることと励起レベルからの電離にエネルギーが費やされることによる。しかし、励起レベルの数を増やせば精度が上がるものではないことがわかった。つまり電離と密接に結び付いた電子の密度に依存した、圧力電離の効果を考慮する必要がある。特に固体密度のプラズマでは重要である。電離(励起レベルの数に依存)による圧力電離と励起レベルの数が自己矛盾ないよう励起レベルの数を決める必要がある。またエネルギー収支を計算すると再結合加熱によるプラズマ加熱が無視できないことがわかった。 以上より今後は、圧力電離に依存した励起レベルを自己矛盾なく設定できる原子モデルコード開発する必要がある。原子過程におけるエネルギー収支を考慮した流体コードを開発する必要がある。以上をもとに電離フロントによる波長変換を評価する必要がある。
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