本研究の目的は、伝熱面や流体の制御を分散システムすなわち多数の独立したユニットの集合体で行うことにより、エネルギーシステムを自律分散的に制御する可能性を探索し、それを用いた伝熱面、機能性流体の開発を行うことであった。自律分散的なシステムは、構成する各ユニットは単純な機能であるが、システム全体として多彩な制御を行い、エネルギー機器を柔軟化・知能化することが期待できる。この1年の研究目標は、仮想的なシステムを想定しての数値シミュレーションと、個々の知的能力を持つユニットの開発及びそれを用いた基礎的な実験であり、自律分散システムの利点・問題点を検討し、ユニットの知的特性、ユニット間のネットワークについての基礎的な知見を得ることであった。 数値シミュレーションに関しては、(a)知的伝熱ユニットがネットワークを形成している伝熱面システム(知的伝熱面)及び(b)流体中に超微細な伝熱ユニットが分散されている場合(知的流体)を想定し、計算コードの開発、及び数値シミュレーションを行い、ユニットの必要とする特性、配置の問題等について知見を得た。実験に関しては、知的機構を具現化するもののプロトタイプとして、個々がコントロールされたペルチェ素子の集合体によるシステムについて実験を行い、その特性についての知見を得た。また、流体系に使用する微小ユニットの可能性について調査研究を行った。 今後の進展のためには、ユニットに与えるべき特性の多様化と、流体系の実験の具体化について検討が必要である。
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