近年、蛋白質の部分構造をシミュレートするようにデザインされた合成ペプチドを用いて蛋白質の機能を解明しようとする試みが行われるようになってきた。本研究では、(1)S-アルキル化を利用したペプチドユニットのアセンブリング(架橋)法を開発し、(2)この架橋法と申請者が既に開発しているS-S架橋を用いる方法でそれぞれ構築した蛋白質の特性を比較検討することを目的とし、さらに、(3)これら2つの架橋法を用いてカルシウムチャンネルの膜貫通部位のモデルを構築しユニットアセンブリング法の蛋白質機能解明に対する有用性を検討することを目的として、研究を行った。目的(1)に関しては、ペプチドユニット中のCys残基ともう一つのユニット中のブロモアセチル基との間の選択的架橋により、アミノ酸81残基(分子量8100)のα-ヘリックス4量体蛋白質が容易に構築できることがわかった。(2)に関して、この方法で得た蛋白質と、S-S架橋によるユニットアセンブリングにより得たヘリックス4量体蛋白質の性質を比較したところ、今回の方法で得た蛋白質のヘリックス含量に関してはS-S架橋で得たものに比べて若干低かったものの、塩酸グアニジンに対する耐性は非常に高いことが分かった。このことから、今回の方法は、変性剤存在下、高熱下など、苛酷な条件下で働き得る蛋白質の創製に応用可能である事が示唆された。(3)に関しては、カルシウムチャネルと類似のナトリウムチャネルの膜電位センサー領域をターゲットに、現在、架橋最適化条件の検討及び活性測定法に関しての予備実験を行っているところである。
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