研究概要 |
1.芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)変異型酵素の解析 一次構造の比較よりすべてのデカルボキシラーゼに保存されている解離性残基9個について、部位特異的変異によりアミノ酸置換を行い、脱炭酸反応におけるこれらの残基の役割について検討した。その結果、Lys317およびCys311については脱炭酸反応に必須ではなく、またTrp363は芳香族残基で代用可能であった。His192,Asp252および補酵素ピリドキサルリン酸を結合しているLys303に関しては、アミノ酸置換により活性が消失しこれらの残基が脱炭酸反応に必須であることが明らかとなった。His269およびAsp271については変異型酵素の安定な発現が認められず、現在発現効率の上昇のための条件を検討中である。 2.AADCと基質との反応に関する残基の解析 AADCと基質ドーパとの結合のpH依存性から活性部位にpK_a=6-7の解離性残基の存在が示唆された。一次構造の比較からその候補としてHis192およびHis269が予想された。このうちまず、発現量が多く酵素タンパクが十分に得られたHis192をAlaに置換した変異型酵素(H192A)について解析を行った。H192Aは酵素活性を消失しておりHis192が触媒反応に必須であることがわかった。基質アナログであるドーパO-メチルを用いた分光学的解析から、この酵素活性の消失は、反応の初発段階において重要であるアルドイミン交換反応の過程が障害されたためであり、この過程へのHis192の関与が考えられた。 3.AADCの立体構造の解析 AADCの反応機構の解明のためには立体構造についての情報が不可欠である。そこで、AADCの結晶化についてさまざまな検討を行い、結晶化の条件についてはほぼ確立した。しかしながら現在までのところ解析に耐え得る結晶を得るまでには至っておらず、さらによい結晶を得るため条件を改良中である。
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