本研究課題を通して、主として以下の点が明らかとなった。 1.アクチンフィラメントは、その結合しているリガンドによって大きくその構造を変化する。特に、結合しているヌクレオチドのγ位のリン酸の有無はその構造を大きく変え、アクチンの弾性を大きく変える。これは、アクチンの第二ドメインと内側ドメインに大きな変化が生じていることによると考えられる。これは、生物物理学会において報告した。 2.アクチンフィラメントは、同一条件下でも大きくその構造を変化させることを、クラスター解析の手法を用いることによって、明らかにした。特に、アクチンの第二ドメイン及び内側のドメインの構造揺らぎが存在していることが分かった。この手法の開発により、タンパク質の動的構造変化を明らかにする事が出来るようになる。更に、定量的にこの構造揺らぎをあらわすことが出来るような手法へと発展させていく予定である。これは、物理学会において報告した。 以上の結果を踏まえて、本研究で明らかとなったアクチンフィラメントの構造揺らぎや構造変化が、筋収縮などの滑り運動系でどの様な役割を果たしているかについて検討した。これにより、ミオシンとアクチンの相互作用している面での滑りの可能性とアクチンフィラメントの構造変化との関連がある可能性が示唆される。
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