研究概要 |
1.オリゴメリックタンパク質の構造解析のための準備として分子量1万9千のRasタンパク質に関してGTP結合に伴う構造変化を小角散乱により測定し、それにより得られたデータとX線結晶構造座標との比較より、水和構造の差を溶液散乱により示した。その結果GTP結合に伴いタンパク質表面から水和水層の厚さが2.9オングストロームから3.0オングストロームへ増加した。特にGAPと結合する領域において水和の立体構造の差が顕著に見られた。 2.オリゴメリックタンパク質でも分子量55万と大きいRibulose-1,5-bisphosphate Carboxylase/Oxygenase(ルビスコ)について、活性実態、不活性実態についての構造変化およびその温度依存性について調べた。特に65度以上ではタンパク質が解離し、変性が観測された。また結晶構造との比較を行ったが分子量の小さいタンパク質とは違い結晶構造の方が溶液構造と比較して最大長が5オングストローム大きくなった。 球対称物体の散乱から電子密度を求めるbox refinementは理論的には知られていたが、バクテリオロドプシンが600個以上から成り立つバクテリオロドプシン球殻構造に適用し、さらにindirect法も組み合わせてその動径方向の電子密度を求めた。その結果脂質の電子密度分布が球殻構造の内側より外側の法が高くなっていることがわかった。また球殻構造をとっているとき膜厚が80オングストロームと推定された。さらに高次構造形成機構を知るために結晶化条件との相関を調べている。
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